イベントレポート

2021.12.09

【アフターレポート】アート体験型マルシェ FOOD ART STATION “Passing Trains” (日々の落とし物) 

去る11月7日(日)、日ノ出町駅~黄金町駅の高架下にて、第2回目となる「FOOD ART STATION」が開催されました。FOOD ART STATIONとは、2021年3月からこのエリアで不定期開催されている、世界で前例のない「アート体験型マルシェ」です。

初音町・黄金町・日ノ出町の頭文字をとって、「はつこひ」と呼ばれる高架下周辺のエリアでは、毎年秋に「黄金町バザール」、年に数回「パンとコーヒーマルシェ」といったイベントが開催され、アートと食という2つの分野が特に盛り上がりをみせています。そんな見どころたっぷりのはつこひエリアに足を運んでもらうなら、「アート作品を観に行こう」、「美味しいパンを買いに行こう」だけではもったいない!食とアートという2つの異なるカルチャーをかけ合わせることで、新たな1つの体験として感動を与えることができるのではないか。この街だからこそできるこの挑戦が、FOOD ART STATION(以下、FAS)です。

”STATION”という言葉には、会場の”二つの駅の間に挟まれたエリア”という意味に加えて、このイベントが繋がりの創出や文化の発信を担う新たな地域拠点のような存在になって欲しいという思いが込められています。

前回のイベント記事はこちら
アート体験型マルシェ FOOD ART STATION “Sense of Wonder” (素材への感性) | 未来ヨコハマカルチャー会議 (culture.yokohama)

今回のFASのテーマは、「Passing Trains 〜日々の落とし物〜」。Passing Trainsとは、通過列車を意味します。このテーマには、「特急列車は止まらないけれど様々な魅力や可能性を持つ日ノ出町や黄金町のように、身近にありながらも生活の中で見過ごされてしまっている“面白さ”や“豊かさ”に目を向けてみよう」という思いが込められています。

イベントには、見過ごしてしまっている「日々の落とし物」を拾い上げられるような仕掛けがもりだくさん!そんな「FOOD ART STATION “Passing Trains” (日々の落とし物)」
当日の模様をレポートします。

高架下を舞台に

今回FASの会場となったのは、高架下にあるTinys Yokohama Hinodecho、かいだん広場、日ノ出町フードホール、Chair COFFEE ROASTERSの4つの施設と、高架下すぐそばにある3つのアートスタジオです。

感染症対策としてマルシェ会場には入場制限が設けられ、来場者の方はまず、総合受付のTinys Yokohama Hinodechoにて、指定入場時間が記載された整理券を受け取ります。

”のこりの今年の自分”へ

整理券を受け取ってすぐ隣のテーブルには、マルシェの来場者全員が参加可能なアート企画「11月の年賀状」が設置されていました。「11月の年賀状」を制作したのは、2019年から黄金町でレジデンスアーティストとして活動されている東地雄一郎さんです。

東地さんは、1枚の写真を2000回コピーする、「A=AA≠A」という制作活動を行っています。コピーというのは本来同じものを作る作業のはずなのに、写真のコピーを2000回くり返すと、像が変化していきます。このように、写真を2000回コピーすることで生じるイメージの変容そのものが、東地さんの作品です。

「11月の年賀状」は、本来は「来年の他人」に出すものである年賀状を、あと2ヵ月を生きる「のこりの今年の自分」に宛てて出すという郵便型のアート企画です。自分に宛てたメッセージの最後に、「今年もよろしく」と書くのがルール。この言葉によって、”見過ごされていた自分”に焦点を当てるのが狙いです。

東地さん「この作品は、始点と終点の間のプロセスを示していて、そのプロセスを”見過ごされた何か”と翻訳しています。見過ごされた何かというのは、今回のテーマであるPassing Trains、ひいては通過駅のメタファーです。

手紙というのはコミュニケーションの根本であるキャッチボールの最小単位だと思っていて。送る、に対して返信がきますよね。それがラインなどのSNSだと一瞬で終わるけれど、手紙というのはdelayがあります。自分が発信して相手から返ってくるまでに3日くらいかかりますよね。

このように始点と終点を引き延ばすことによってそのプロセスを明らかにする、という意味で手紙を選択しました。自分同士だとなかなか分からないけれど、無理矢理引き延ばした”手紙”というプロセスに乗せることによって、昨日の自分と明日の自分は別人だと捉えることもできるのではないか。プロセスをあえて引き延ばすことによって、見過ごされていた自分を理解することができるのではないか、というのが今回の作品です。」

さらにこの作品は、参加者がハガキを取り出すケースにも工夫が。ハガキなしではフタが固定できないような構造にして、「プロセスなしには結果がみえない」という仕掛けが施されていました。

自分自身へ言葉を送ることに少しの気恥ずかしさを感じながらも、当日は100名以上の方が「11月の年賀状」企画へ参加していました。どんな手紙になったかお話を伺うと、「毎日お疲れさま」、「今年はよく頑張ったね」などと、自身を労わる言葉を綴っている方が多い印象でした。

手紙という始点と終点を引き延ばす行為に参加することで、「今手紙を書いている自分」と「数日後に手紙を受け取る自分」が差別化され、日々の生活のなかで見落としている「自分にかけるべき言葉」、「自分にかけてあげたい言葉」に気付くきっかけが生まれているようでした。

東地さんがFASの作品についてご自身の言葉でアーカイブを残されているので、ぜひこちらもチェックしてみてください!
見過ごされるなにかへのアプローチ|Yuichiro Higshiji_write|note

「食べる」の落とし物


整理券の時間が来たら、マルシェ会場へ。今回のマルシェでは、「食べるという行為の中で普段見落としてしまっている豊かさとは何だろう?」という問いが設定されていました。麦、米、豆といった穀物など、食べ慣れてしまっているが故にあまり目を向けることのない食材たち。そのような見落としがちな食材にこだわりを持つお店が多数出店していました。
パン、コーヒーに加えて、おにぎり、豆、布製品や横浜産野菜など、多様なお店が出店した、見どころたっぷりのマルシェ。店主さんたちにこだわりを伺いました。

かいだん広場会場に出店していた「NoPell bakery」さん。厚木に店舗があるパン工房です。

店主さん「今回のテーマに合わせ、小麦の香りを感じて、噛めば噛むほど味が出るような商品を中心としたラインナップにしています。

テーマのあるマルシェだと、お客さまがそのテーマに沿ってご来店されると思うので、私たちが作ってきたものとお客様が求めるものが、ある程度一致しているのかなと感じています。マルシェ全体としてお客さまにこういうものを発信したいという思いと、作る側のじゃあこういうものを作ろうという思いと、お客様が求めるものが一致するのがおもしろいなと、今回お客さんの反応見てると思いますね。」

日ノ出町フードホール会場に出店していた「おにぎり弁慶」さん。横浜で43年続く、おにぎり専門店です。

店主さん「マルシェのテーマにお米があったので出店させていただきました。なるべく自然のものを提供したいなと思っているので、お味噌や梅など色んなものを自分たちで手作りしています。お米が1番なのは譲れないところで、コシヒカリにこだわって作っています。

今日は常連さんとか、昔のお客さんが何人か来てくださって、すごく嬉しかったです。長くお店を続けていると、お客さんのお子さんが成長していく段階も見られたりとか、その子が妊婦さんになって来てくれたりするんです。そういう繋がりを感じると、続けた甲斐があるなと思います。

梅とかお米とかお漬物とか、昔の人が作っていたものって絶対体に良いんですよね。それは親から子に伝えていってほしいなという思いもあって、お店をやっています。」

Chair COFFEE ROASTERS会場に出店していた「naturavia」さん。世界三大医学に数えられるインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」に用いられている「ギーオイル」を販売しています。食べ物として口に運ぶだけでなく、肌に塗って潤いを与えたり、治療として少し加熱したものを目に入れたり、傷口に塗ったりするそうです。

店主さん「ギーオイルは日本ではまだあまり知られていないですが、アメリカのTIME誌で50の健康食の1つとして紹介されていて、話題になる可能性のあるオイルだと思います。医療分析の結果、脂質が10種類以上入っていることが分かり、人気のオイルの良いとこ取りをしているような品物です。

ギーオイル自体も身体に良いのですが、うちはなおかつ質が良い乳製品から作っています。岩手県で山地酪農(牛の生命力を生かし、1年中牧山に放牧する酪農スタイル)を行う酪農家さんの乳製品を使用しており、自然妊娠で、牧草で育っているため穀物やケミカルが入っていません。動物虐待もなく、きちんと育てられているから質が良い乳製品ができるんです。

この水準で牛を育てているのは、酪農家が1万5000件いたとして1件や2件いるかどうかというレベル。私たちはこのような酪農家さんの割合を少しでも増やしていきたいと思っていて、それに向けて意識を変えていく、情報を伝えていくという活動もしています。」

Tinys Yokohama Hinodecho会場には、「a*maze Coffee House 」と「405 COFFEE ROASTERS」が出店。心地よいコーヒーの香りが漂っていました。

a*maze Coffee House店主さん「うちはドリップに時間をかけるので、食いついて見ている方も多くて。こうすると美味しくなりますよ、などちょっとしたアドバイスをさせていただいたり、お客様とお話ができたので良かったなと思います。

うちと405 COFFEE ROASTERSさんのコーヒーを飲み比べて違いを体感している方もいらっしゃって、楽しんでいただけたかなと思います。」

来場者の方「コーヒーは好きなんですが詳しくないので、酸味というよりはフルーティーなのを飲んで見たい、というすごく抽象的なオーダーをお店の方にお伝えして、コーヒーをオススメしていただきました。種類がたくさんあったので、香りを嗅がせていただいたりして。

カフェだと店員さんと会話をするには少し敷居が高い気がして、色んな豆があっても結局メニューに書いてあるコメントを見て選ぶんですけど、ここだとお店の方と喋りながら、楽しく自分に合うコーヒーが選べました」

お店の方と来場者の方がこだわりや好きなものを伝えながら、商品を売ったり買ったりできるのは、マルシェの大きな魅力ですね。

会場を提供している Tinys Yokohama Hinodechoでは、新メニューの「ファラフェルサンド」と「フムスサンド」を販売。お肉不要なのに食べ応えのあるメニューを子どもから大人まで多くの方が味わっていました。

オープンスタジオガチャ

Tinys Yokohama Hinodechoを出ると、不思議なガチャガチャが。このガチャガチャは、FASが仕掛ける2つ目のアート体験です。誰でも1回だけ回す事のできるガチャガチャには、アーティストのプロフィールとスタジオへの地図が描かれています。「アートの街っていうのは知っているけど、アーティストはどこでどんな風に活動しているんだろう」。このように意外と見落とされてしまっている、このエリアの魅力と出会うための仕掛けです。

地図を頼りに少しドキドキしながらスタジオに入ると、アーティストさんが出迎えてくれました。実際に創作活動している場を見れたり、作品について対話したりできるのはとても貴重な体験ですね。なかには、「黄金町バザールの時から目を付けていたから、また観れて嬉しい!」とスタジオに入ってくる地元の方もいらっしゃいました。

手すりが飛び出し、草が生えるスタジオ!?

今回スタジオを公開していた3人のアーティストを紹介します。
1人目のアーティストは、オーウェン・ラオさん。2019年より黄金町アーティストインレジデンス(以下、AIR)に参加し、階段、接続性、失敗、思索といったコンセプトに関係する作品を制作しています。

オーウェンさんのスタジオは2階まで公開しており見どころたっぷり。1階には、壁に展示された作品に加えて、床から不規則に生えている草が。「スタジオのアルコリズムをちょっとだけコントロールして庭みたいにしたい」という思いでデザインしたそうです。

2階へと続く階段を登りきると、なんと手すりが窓の向こうへ飛び出していました。まずはスケッチを描き起こし、そこから立体的な創作を行ったというこの作品。手すりは自分、つまり人間を表しており、窓の向こうへと飛び出す手すりは自分の命が続いていくことを表現しているそうです。

2階は作業スペースとなっており、作業台や、これから創作に使う予定の階段をモチーフにしたランプなどを見ることができました。1階や階段で見た作品はここで作られたのかぁ、となんだかドキドキします。

水と光と廃材と

2人目のアーティストは、SUZUKIMIさん。2019年より黄金町AIRに参加し、食品の包装材や空になった牛乳パックなどの廃棄物を素材として制作活動を行っています。

SUZUKIMIさん「廃棄物を材料として使い出したのは、さっきまで商品棚に並んでいたものの中身だけを使ってその他はゴミ箱に入れるというサイクルのなかで、ゴミになる瞬間、その境目って何だろうと思ったのがきっかけです。

地球にあるものってすべてが循環していて、そういう循環というところに私はすごく興味があるのかなと感じています。なのでリサイクルされるゴミに関心があって。食品プラスチックゴミとか服とか、燃やして灰になってしまうものはもともとは同じ分子から生まれたものだという意識から色々なことを考えて、今年の黄金町バザールのテーマ”side by sideの作り方”に沿ってさらに自分のなかで広げていきました。」

”循環”というSUZUKIMIさんのテーマとも関連し、昨年から水を落とす作品も制作しているそうです。食品プラスチックで作られた海の生物の作品は、スタジオの上部から水を落とし、下部から光を当てることで、壁に波紋のなかを泳ぐ生物たちが映る仕掛けになっています。

水滴が落ちる位置もバラバラで、スタジオへの風や光の入り方で映り方が常に変化するこの作品。水と光によって生まれる自然な揺らめきは、スタジオを訪れた方々にとても好評だったそうです。

「思わないことを思う」

3人目のアーティストは三ツ山一志さん。複数の美術館で館長を歴任し、2019年より黄金町AIRに参加しています。同年、アートの活動を通して子どもたちの自立心を養う場として「子どもの育ちのためのアートらぼ」を設立しました。

三ツ山さんのスタジオに入ると、木の額縁に飾られた空き缶とタバコの箱の展示が。黄金町AIRに入居してから、スタジオで作業をする前に近所のゴミ拾いをしているという三ツ山さん。ゴミとして捨てるものと取っておくもので袋を分けて、「お!」と感じた空き缶やタバコの箱を使って制作をしているそうです。

三ツ山さん「この空き缶やタバコの作品は、感覚の練習かな。額縁のどこに缶を置くか、その周りに何を置くかというのは感覚で。例えば、人の顔に見立てて何かをつくるのであれば、方法があって、その表現について説明ができるけれど、ただ、”お!”と思うように飾るというのは感覚の部分。

心を動かすのもスポーツと一緒で、トレーニングをしないといけないと思っていて。ものすごく小さい子どもの時までは、感覚は自然に備わっているものかなとも思うけれど、だんだん世の中に染まってくると、善悪だとか、意味だとか、価値だとか、そういう情報がいっぱい入ってくるじゃない?そうすると、自分はこれが好きとか、これに関心したというのがなくなっていっちゃう。

これはアートに限らず生き方も同じ。どこかで練習しないと、”何を良いと思うか”が自分で決められなくなってしまう。先入観があると決められなくなってしまうから、そういう意味では、頭を空にして、”思わないことを思う”っていう状況をつくらないとと思って、練習したのがこの作品たちです。」

ただ作品を観るだけでなく、アーティストとの対話によってより深く作品の世界に触れることができた今回のオープンスタジオ。外からスタジオの前を通過するだけでは味わうことのできない魅力を感じることができました。

いつも通り過ぎるガレージがライブ会場に!

お腹も満たされ、アートも満喫したお昼過ぎ。音楽に誘われて高架下沿いを歩いていくと、塚田商店のガレージへとたどり着きました。演奏していたのは、地元のメンバーで構成されるミュージックバンド漢組(おとこぐみ)。新型コロナウイルスの影響で久しぶりとなったライブに、地元の方やFASの来場者、通りすがりの方が足を止め、漢組の音楽に耳を傾けていました。

お得情報満載!商店会ブース

Tinys Yokohama Hinodecho前には商店会ブースが設置されており、商店会のお店の商品や、イベント当日限定のお得情報が紹介されていました。FASのパンフレットを持っていくとドリンクや替え玉をサービスしてもらえるお店があり、街全体がFASにあわせて盛り上がっていることを感じます。

mizube bar & さんばしポケットプロジェクト

さらに、マルシェ会場前の大岡川沿いには、学生たちの取り組みにより、賑わいが生まれていました。1つは、日本大学理工学部海洋建築工学科の親水工学研究室によって設置されたmizube bar。川辺や海辺の防護柵などをカウンターバーとして活用する空間装置で、はつこひエリアのマルシェの際にはすっかりお馴染みとなっています。川を眺めながらゆったりとした時間を過ごすことができるmizube barは、今回も多くの方に利用されていました。

今回から新たな試みとして行われたのは、横浜市立大学鈴木ゼミによる「さんばしポケットプロジェクト」。「素敵な景観があるのに川沿いに座ってくつろげる場所がないのはもったいない」という思いが出発点となり、Tinys Yokohama Hinodecho前にある桜桟橋周辺の空間がまちの人たちの居場所になるよう、芝生、テーブル、カラフルなベンチが設置されました。空間がパッと明るく見え、こちらも多くの来場者の方が利用していました。

明るい色の野菜がたくさん売れました

夕方になりマルシェの商品も残りわずかに。日ノ出町フードホールに店舗を持ち、横浜産の無農薬野菜を販売する「ヨコハマベジメイトプロジェクト FarmDeli & Bar」のスタッフの方々に1日の感想を聞いてみました。

スタッフの方「今日はたっぷりお客さんとコミュニケーションがとれました。緊急事態宣言が解除されたこともあってか、皆さん積極的に話してくれて。日曜日で学校が休みだったので、お子様連れの方も多かった気がします。

若い方含めて農業に興味のある方がたくさんいらっしゃったのですごく楽しかったです。野菜も明るい色のものがたくさん出て、みなさん気持ちが前向きになっているんだなぁと感じました」

子どもと一緒に楽しめるマルシェ

来場者の方は、FASをどのように楽しんでいたのでしょうか。母娘でご来場していた素敵なご家族に、FASの感想を伺いました。

女性「コロナ禍前、パンとコーヒーマルシェに来たことがあるのですが、すごい行列で諦めてしまったことがあって。近くに住んでいるので、ヨコハマベジメイトプロジェクトさんが毎週火曜日にやっているマルシェに時々来るのですが、そこで今日のチラシをもらったので遊びに来ました。

子どもと来るとどうしても食べ物ばかりになってしまうんですが、一緒にハガキを書いてみようかなと思います」

歩いて楽しい高架下

友人と一緒に初めて黄金町に足を運んだというこちらの女性にも、FASの感想を伺いました。

女性「学生のときに少しまちづくりの勉強をしていたので、あまり良い印象を持たれていないエリアをアートで活性化している黄金町はずっと気になっていました。実際に来てみて、
高架下をこんな風に使えるんだ、というのが1番の驚きでした。空いているスペースが活かされていて、歩いていてすごく楽しかったです。

友人と私でガチャガチャを回して、2つのスタジオに伺いました。アーティストさんに直で話を聞く機会もなかなかないですし、自分がそれに対して感想をお伝えして、さらにそれに応えてもらうというのは今まで経験したことがないので、本当に面白かったです。美術館だと展示されている説明文を見るだけなので、アーティストさんと会話ができるのが新鮮でした。

私も普段の生活の中で見落としているものに気付いてきゅんとすることがあるので、自分の興味と通ずるところもあり、”日々の落とし物”は素敵なコンセプトだなと思いました。最初にマルシェを回って、ひと段落してパンフレットを読んで、あぁ繋がっているんだ、と感動しました。すごく楽しくて良い休日になりました」

FASの落とし物

550名ほどの方が足を運び、大盛況で幕を降ろしたFOOD ART STATION “Passing Trains” (日々の落とし物)。コンテンツ盛りだくさんのFASが円滑に進むのは、学生スタッフの協力あってこそ。mizube barを設置した日本大学と、さんばしポケットプロジェクトを行う横浜市立大学の学生さんが、空間の活用だけでなく、スタッフとしてFASを支えています。

FASはマルシェとアートが主役のイベントですが、その背後にはこの街を愛するたくさんの人のアイデアや協力があることに気付くと、またひとつ、”見過ごされた何か”を拾い上げることができるかもしれません。

アーティスト、マルシェの出店者、来場者の方々、学生スタッフ、運営に奔走する地域プレイヤーの皆さん。たくさんの人が共に創りあげるFASが、これからさらに盛り上がっていく未来が楽しみです。

FASのコンテンツとして、「FOOD ART STATION TALK」と題したポッドキャスト配信を行っています。初黄日商店会 小林直樹さん、パンとコーヒーマルシェ 臼井彩子さん、黄金町エリアマネジメントセンター 本田真衣さん、YADOKARI株式会社 伊藤幹太さんが「このまちで見落とされてしまっている魅力」をテーマにトークセッションを行っているので、こちらも合わせてお楽しみください。
https://spoti.fi/3a8RWHF

取材・文/橋本彩香