ローカルキーマン

エンタメ2020.12.07

横浜駅

「面白い」を届けたい。エンタメだからこそできる、新しい街づくり。

株式会社アカツキライブエンターテインメント マーケティング本部長山岡大介さん

感性を豊かに保つことで、心身ともに満たされることもある。

古来から神事にも「遊び」が付きものだったり、仏教でも「遊化(ゆけ)」という言葉で、何事にも囚われない自由な境地を表すように、純粋な歓びは暮らしの一部として欠かせないもの。

2019年の3月、横浜駅東口に登場した複合型体験エンターテインメントビル「アソビル」は、多種多様な楽しみを提供し、オープンから3ヶ月で100万人という来場者を記録した。横浜駅直通という好立地に甘んじず、徹底的に面白いことを提供しようとする取り組みについて、マーケティングを担当する山岡大介さんを訪ねた。

フロア別に建物全体が規格外の場づくり

「アソビルは、横浜中央郵便局の真裏にあたる場所にあります。横浜駅からは、みなみ東口から中央郵便局前につながる通路で繋がっているので、市内だけでなく、県外など遠方からもお越しいただきやすいところです。

地下から屋上まで、各フロアごとに違う遊び方ができるように設計してあるので、ファミリーでもお一人でも、また、お子さんや学生だけでなく中高年世代にも、幅広くエンタメを提供できるようにしています。地下スペースは貸し切りイベント会場としてパーティが開催され、1階のグルメストリートは横浜の人気店などが揃い、常に賑わっています。2・3階のイベントフロアも企画の度に多くの方がお越しくださいます。そして屋上にはスポーツコートがあります。(4階のキッズパークは現在休業中)

アソビルは「エキサイトよこはま22」の中で、開発想定エリア(オアシス計画エリア)に位置付けられ、現在事業化に向けた検討が行われています。その事業化に支障のない期間での暫定活用を予定して、アソビルが立ち上がりました。

ゲーム会社であるアカツキ社に、サバイバルゲームのフィールドを提供していた株式会社ASOBIBAが参画し、リアルなイベントを提供する株式会社アカツキライブエンターテイメントとして運用しています。

元々「おもしろいこと」に突き動かされるタイプの社員が多いため、ある意味では型破りというか、周りの方に驚かれるようなこともありました。一般的な商業施設は、最上階に飲食店を入れて来場者が回遊しやすくしたり、ある程度の顧客層をイメージして施設を設計するのですが、そうしたセオリーに全く沿ってない形でリノベーションしてるので、いろんな方に「大丈夫なの?」と心配されたりしましたね(笑)施設の造りが特殊だったという事情もありますが、不動産や商業施設の業界じゃなく、あくまでエンターテイメントの会社だということが功を奏してできた施設ともいえるかもしれません。

1階の壁面アート

各フロアやコンテンツごとにそれぞれの担当プロデューサーがいて、私の仕事は彼らの考えを聞きながら縦方向にまとめるというか、全体を見ています。一緒に企画を考えることもありますし、私が個人的にプランニングすることもあります。以前、桜木町でサバイバルゲームのフィールドは運営していたこともあるのですが、改めて、アソビルがどうしたら横浜で喜んでもらえるか、ということを意識して全体のPRを担当しています。

暫定的な施設ではありますが、横浜駅から直通でお越しいただけるのはありがたい立地だと思います。これだけの規模を仮に都内でゼロから作ろうとしたら、どれほどの予算が必要だったかわからないですよね。神奈川県外からお越しくださる方にとっても、横浜に来たらアソビルだけでなく周りにも楽しむ場所があって、色んな方が違った形で横浜を楽しんでもらえると良いですね。

運営側の私たちも、面白いか否か、を非常に大切な指針にしているところがあります。自分たちが面白いと思うことを、みんなが楽しんでくれるかどうか。それを最優先にしてるので、例え施設が期間限定であっても全力でエンターテイメントを企画しています。心配してくださった方は多かったですが、僕らがこれほど本気で「面白いこと」や「楽しいこと」を優先していなければ、アソビルは生まれてなかったと思うんです。

横浜全体を一緒に面白く、コロナ禍でもできることを

ある意味でアソビルは実験場みたいなところでもあります。ここでヒットしたものが別の場所に派生するようなことも続いていて、例えばオープン当初に各方面で取り上げていただいた企画「うんこミュージアム」はお台場に場所を移して続いています。アソビルでヒットした文化が他の街へ繋がり、多くの方にエンタメを提供できていることはとても嬉しいです。

どうしても地下フロアなど、コロナの影響を受けて一部休業になったことは残念なんですが、これまでエンタメを提供してきた側として、今だからこそ新しくできることはどんどんやっていきたいと思っています。

例えば、1階のグルメフロアは駅からすぐ来れることもあって、店舗も営業を続けていました。僕たちもできるだけ応援しようと思って、「アソビル横丁通行手形」というのを始めました。これは、ネットからお申込みいただき月々980円をお支払いいただくと、横丁の対応飲食店で毎日1杯ドリンクサービスが受けられるというお得な企画です。

食だってひとつのエンタメですから、どんな状況でも楽しんでもらいたいと思って考えました。また、ご自宅でも横丁をお楽しみいただけるように、フードデリバリーにも対応を始めました。

この秋からは飲むチーズケーキ「NOMU CHEE」も始まり、ECサイトも店頭販売も、どちらもたくさんの方にお楽しみいただいています。

アソビルは、常に「カルチャー」「クリエイティブ」「テクノロジー」という軸を重要視しているのですが、NOMU CHEEはポップなイラストと片手で楽しめるというカルチャー感を前面に出し、ECサイトの方が店頭販売よりも先行だったという点ではテクノロジーも活かしました。それに、そもそもチーズケーキを飲めるようにしたこともクリエイティブを実現できたと思っています。新しいフードトレンドとして、色んな方に楽しんでいただきたいですね。

ⓒ尾田栄一郎/集英社 ⓒ尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

また、コロナによって時期をずらしたりはしたものの、内容は変えずに開催する企画もあります。。特に、密になりすぎない運営ができたり、マスクをつけた状態でも楽しんでいただけるアート展などはできるだけ開催していきたいですね。

バンクシー展もコロナ禍でしたが、たくさんのメディアに取り上げていただいたこともあって、ご来場者が非常に多く、会期を延長したほど好評でした。11月末からは、『ONE PIECE』を軸にしたアート展『BUSTERCALL=ONE PIECE展~受け継がれる意志 人の夢 時代のうねり 人が「自由」の答えを求める限りそれらは決して止まらない~』も無事に開催できることになりました。ロサンゼルス、上海に続いて、横浜でONE PIECEのアートをご覧いただき、グッズ販売なども行います。ご来場は予約制などの制限をさせていただくことになりますが、無料展示ですし、たくさんの方に安全にお楽しみいただけるように運営体制を考えています。

コロナの影響は小さくありませんが、まだまだ新しいことを考えたり、周りの企業さんと協働できることがあると思うんです。個人的にも、新しい人と出会ったり、人を紹介しあったりすることが好きですし、せっかくこうして横浜にいるのなら横浜で何か面白いことがしたいとも考えてます。僕らはゼロから何かを作るというよりも、1と1を合わせてどのくらい大きくできるか、と考えることが得意なので、横浜の企業や商業施設と一緒に何かできることが理想ですね。

横浜駅周辺は、京急ミュージアムのように自社ビルの1階に体験スペースを置いてる企業さんがすごく多いので、それなら一帯みんなでエンタメを提供することも可能だと思うんですよ。駅につながったアソビルが発信地になって、東口が面白い、というイメージ作りに貢献したいですし、アソビルから歩いて行ける企業や施設も合わせて「横浜が面白い!」と思ってもらえたらいいですよね。

(取材・文/やなぎさわまどか)

株式会社アカツキライブエンターテインメント マーケティング本部長山岡大介さん

Webメディアでのメディア企画室長を経て、サバイバルゲームフィールドを運営する株式会社ASOBIBAを創業。2018年に株式会社アカツキライブエンターテインメントへ社名変更し、現在は「アソビル」のPR・マーケティング責任者を務める。
https://asobuild.com/