カルチャースポット
映画館2020.09.24
長者町
ファンと共にwithコロナ時代を歩む、歴史ある街の映画館
横浜シネマリン
2020年春、緊急事態宣言が発令され、日本全国の映画館が休館を余儀なくされた。50年以上の歴史を持つ横浜伊勢佐木町のミニシアター「横浜シネマリン」も例外ではない。休館中、「支援させて欲しい!」というファンの声をきっかけに、オンラインショップを開設。営業再開後も、映画の登場人物の写真を座席に張り、ソーシャルディスタンスを保つなど、ユニークなニューノーマルを作り上げている。
「支援したい!」ファンの声でオンラインショップを開設
「グズグズしていたら皆さんにお尻を叩かれて、オンラインショップをスタートしまして」と優しい笑みを交えながら語るのは、八幡温子支配人。多くのミニシアターがクラウドファンディングやオンラインショップに積極的に動き始めているなか、ファンの方々から、「なんでシネマリンさんは何もやらないの?」、「応援したいのにどうやって応援したら良いのかわからない」という声があがった。それをきっかけに、「皆さんのお気持ちをいただく受け皿を作らないといけないし、できるかわからないけどちょっとやってみようか」と、オンラインショップの開設を決意したそうだ。
急ピッチで準備を進め、休館から1週間後、4月15日に開設したオンラインショップでは、映画鑑賞補助券、Tシャツ、缶バッジセット、手ぬぐいなどが販売されているほか、会員入会の手続きも行っている。
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横浜シネマリン応援オリジナルTシャツ(グレー)
オンラインショップの開設にあたって作られたオリジナルTシャツには、八幡支配人の飼い猫をモデルにした、横浜シネマリンのマスコットキャラクター「クリコちゃん」がプリントされている。生地にこだわった一品で、ホワイト、ブラック、グレーの3色、サイズはそれぞれS、M、Lが用意されている。

横浜シネマリンオリジナル缶バッジセット
缶バッジセットは、「何か横浜シネマリンに貢献したい」と声をあげたファンの方がボランティアで作成した、思いの詰まった一品。
「今回のことで改めて、心から応援してくださっている方がこんなにたくさんいるんだなっていうのは、すごく励みになりましたね」と語る八幡支配人。その気持ちを伝えるため、商品の発送時には、支えてくれたお客さんへの感謝の手紙を同封している。
登場人物たちと一緒に映画鑑賞を
他の施設と足並みを揃えるように、6月1日から営業を再開した。座席数は半分以下に減らすことになったが、そんな状況でも、ファンを楽しませる工夫は忘れない。使用できない座席に、上映作品のキャラクター写真を貼ることで、ソーシャルディスタンスを保ちながらも、登場人物と共に映画を観ているかのような粋な空間を演出している。
同じく横浜市中区にあるアートセンター若葉町ウォーフの代表である佐藤信さん(劇作家・演出家)の話から着想を得たというこの演出は、「若き日の女優さんたちに囲まれて映画を観てきました!」などとSNSでも好評だ。作品の上映期間に合わせて写真を貼り替えるため、訪れる度に違ったキャラクターの隣で映画を観ることができる。映画好きにはたまらない試みだ。
コロナ禍で奪われた以上の楽しみを創出

八幡支配人
「本当に自分が良いと思った作品とか、これを上映したい!という作品を選んで上映していて、そのこだわりを皆さんが良いよって言ってくださる。このこだわりのようなものを裏切らないように、作品をセレクトしていきますので、よろしくお願いします」(八幡支配人)
コロナ禍において奪われてしまった楽しみは確かにあるが、工夫次第では新たな楽しみを創ることもできる。単なる「映画館」と「お客さん」という関係を超えた「歴史ある街の映画館を愛する人々」が一体となり、横浜シネマリンはwithコロナという新しい時代を歩き始めている。
取材・文/ 橋本 彩香