多様なカルチャーが交差する、日ノ出町駅前のイケてる溜まり場 ／ALL WELL

2022年4月、日ノ出町駅の向かいにある日ノ出サクアスビルの1階に、街の新たな顔となるイケてる溜まり場「ALL WELL」が誕生した。「クラフトビールとアウトドアギアとアパレルのセレクトショップ」を掲げているALL WELLであるが、その枠に留まらず、様々なカルチャーが交差する場として、日ノ出町に新たな風を吹かせている。

固定概念を覆す国産クラフトビールの魅力

「ALL WELL -HANGOUT N THE HOOD-」のロゴが描かれた扉を開けると、天井高5ｍの開放的な空間に大型冷蔵ショーケースが鎮座し、多種多様な国産クラフトビールが肩を並べている。

山口さん「3年ほど前からクラフトビールにハマっており、アパレル関係の仕事をしている相方と、お互いの好きなものを掛け合わせて何か面白いことをしようと話をしたのが、ALL WELLを作るきっかけでした。

クラフトビールは苦いものや甘いもの、酸っぱいものからトロピカルなものまで味が本当に多種多様で、ビールの固定概念を壊してくれるところが魅力だと思っています。色々な国のビールを揃えるのも面白いと思いますが、ALL WELLで扱うのは、基本的には国産のクラフトビールに限定しています。やっぱりジャパンクオリティは良いですよね。コロナ禍もあったので、国内のブルワリーを応援したいという気持ちもありつつ、国産のビールオンリーにすることで店としてブランディングをしています。

日本にはイケてるマイクロブルワリーがたくさんありますし、最近は横浜や茅ヶ崎にもブルワリーがどんどん増えています。瓶や缶のラベルも可愛いものが多く見た目でも楽しめるので、ぜひ色々なビールを手に取ってほしいです。」

こう語るのは、オーナーの山口洋介さん。横浜市中区で3つの飲食店を経営しており、その3店舗目として仲間と共にオープンしたのがALL WELLだ。

店頭に立つ横浜市出身のラッパー・句潤さんも、クラフトビールに魅力を感じている1人だ。

句潤さん「僕はビールがあまり好きではないのですが、ここのクラフトビールは飲むことができるんです。ブルワリーや種類によって全く味が違うのがクラフトビールの面白いところですよね。ALL WELLには本当にたくさんのクラフトビールがあるので、色々な種類を飲んで美味しいと感じるものを見つけることができると思います。

店内で飲む方向けに、チーズや鴨、ナッツの燻製などちょっとしたつまみも用意しているので、仕事終わりに一杯飲んで帰っていくサラリーマンの方もいらっしゃいます。ビールをジャケ買いをしたり、飲み終わった後の瓶や缶を持って帰る方もいて、そういった楽しみ方ができるのもクラフトビールの魅力だと感じています。」

週に3日ほどALL WELLに通っているという常連の男性は、「美味しいクラフトビールない？と聞くと色々教えてもらえるから、タップを飲んだ後にショーケースから1本選んで買って帰るんだ」とおすすめの利用方法を教えてくれた。ALL WELLの豊富なラインナップの中から見つけた自分好みの1杯は、きっと格別な美味しさに違いない。

こだわり抜かれた空間に老若男女が訪れる

なかなか良い物件に巡り合えなかったなか、山口さんが「バチっときた」と語るALL WELLの物件。増設されたロフトフロアにはアウトドアギアやストリートブランドのアパレル商品が並び、スタイリッシュな空間で買い物を楽しめる仕様となっている。アパレル商品目当ての10代の若者からお酒を嗜む年配の方まで、老若男女問わず幅広いお客さんが足を運んでいるそうだ。

山口さん「何屋か分からないと言われることもありますが、ビール一杯だけでも、商品を見るだけでも良いので、ぜひ気軽に立ち寄ってほしいです。うちは昼から21時までの営業なので、お酒が飲める世代の方には、野毛に向かう前のスタート地点として0次会に使ってもらえたら嬉しいですね。日ノ出町の入口で1,2杯飲んでから野毛に向かうルートを是非推奨したいです。」

細部までこだわり抜かれた店内の中でひと際目を引くのは、カウンターの背面にある6つのタップだ。山口さんの友人であり、日本伝統の藍と現代左官を世界で初めて融合させた「初代 藍左師」として活躍するReita MORIYAさんが制作した壁に、スケートデッキから作られたハンドルのタップが埋め込まれ、他に類を見ない独創的なタップルーム使用に仕上げられている。

多様なカルチャーが交差し、人が集う場所に

写真左：高橋憲助さんのペイント　右：クラフトビールのラベル

オープン時からすでに洗練された店内であったALL WELLだが、時を重ね、さらなる進化を遂げている。2022年11月5日、6日に静岡の醸造所「West Coast Brewing 」とコラボレーションして開催されたTAP TAKEOVER（特定のブルワリーに限定したビールを提供するイベント）では、横浜市出身のペインター・高橋憲助さんによるライブペインティングが行われ、ALL WELLの壁に新たな色彩が加わった。

さらにこのイベントでは、山口さんと繋がりがあるアジア料理のお店がビールに合わせたフードを提供した他、句潤さんが6人のDJを招き、ビール、アート、食、音楽が複合的に楽しめる2日間となったそうだ。

山口さん「11月のTAP TAKEOVERは、ビールとアートと食と音楽が一体となって、とても楽しい2日間でした。僕は飲食関係の人たちと繋がりがあるし、相方はアパレル、句潤は音楽、3人のそれぞれの分野の繋がりがあるので、色々なジャンルを融合できるのがALL WELLの強みかもしれないですね。句潤の繋がりでミュージシャンやアーティストに店頭に立っていただくと、本当にたくさんの方が足を運んでくれるんです。」

句潤さん「ICE BAHNのFORKさんに1日店長をしていただいた日は、本当にすごい賑わいで、途切れることなく営業中ずっとお客さんが来てくれました。店名のロゴに『HANGOUT’N THE HOOD』という言葉があるように、ALL WELLには『近所の溜まり場』というコンセプトもあるので、イベントを開催することで直接人と会って話すことができる場が作れたらと、音楽系のイベントや個展なども積極的に行っています。

ワールドカップのシーズンはプロジェクターを出して、ビール片手に最高の臨場感のなか皆でサッカーを楽しんでいました。臨機応変に色々な使い方ができるのも、ALL WELLの強みだと思います。」

山口さん「オンラインが主流の時代ではありますが、僕は顔を見て話すことでしか生まれないものがあると思っているので、もっとイベントやコラボレーションをやっていきたい気持ちがあります。立地的にも店の造り的にも色々な可能性がある場だと思うので、ビール会社やブルワリーなど色々なお店を絡めたイベントをしたり、個展を開いたり、人が集まって楽しめることをして、この場所から面白いことを発信していきたいです。」

横浜は、ウェルカムでオープンなまち

左から句潤さん、常連の男性、山口さん

最後に、この街の印象とオススメの場所、そしてALL WELLのこれからについて聞いた。

句潤さん「横浜は、外から来た人に対してウェルカムでオープンなまちだと思います。横浜の人はあまり外には出ていかないけれど、横浜を訪れた人を全力でおもてなしするスタンスな気がします。

日ノ出町・黄金町エリアのおすすめスポットは、伊勢佐木町通りにある『かっ飛ばせ和田』という串揚げ酒場です。ラッパーの先輩がやっている立ち飲みのお店なのですが、先日焼酎ソムリエの資格を取得していました。DJイベントなども開催されていて、溜まり場のような良いお店です。」

山口さん「高架下の裏通りにある『Laugh Park』というバーはオススメですね。少し怪しい雰囲気のお店ですが、音楽系のイベントなども開催されていて、僕らもよく足を運んでいます。

日ノ出町・黄金町エリアの高架下はアートなどのコンテンツが入り再開発が進んでいるので、野毛だけではなく、高架下側にもう少し人が足を運ぶ流れを作っていけると良いのかなと思います。近隣のお店と関係を作っていくことが大事だと思うので、自分たちも高架下の動きに混ざっていければと思っています。

ALL WELLとしては、クラフトビールはもちろん、ストリートカルチャーも同時に楽しめるスポットとして、日ノ出町駅前で面白いことを仕掛けていきたいです。東京からわざわざ足を運んでもらえるくらいイケてる場所にしたいと思っています。」

句潤さん「お店に立っていると色々な案が出てくるので、それをその都度実現させて、たまり場のような場所にしていきたいです。来てくれた人は誰でもウェルカムな横浜スタイルなので、何も考えず、構えず、気軽に扉を開けてほしいです。女性スタッフもいますし、小さいグラスでの飲み比べもできるので、ぜひフラッと足を運んでみてください。」

クラフトビール、アウトドア、ストリートカルチャー。専門分野の異なる3人が楽しみながら様々なイベントを仕掛けるALL WELLは、ロゴに込められた思いの通り、近所の人々が集う「溜まり場」として、日ノ出町に新たな賑わいを生み出している。日ノ出町を訪れた際はぜひALL WELLの扉を開き、「すべてが上手くいく」イケてる空間を堪能してほしい。

取材・文／橋本彩香