お出かけスポット

カフェ2023.03.31

中区日ノ出町

古民家をリノベーションして作られた、野毛山の中腹に佇むカフェ&美容室/WAEN dining & hairsalon

WAEN dining & hairsalon

日ノ出町駅の裏側に広がる野毛山エリア。その中腹に、古民家をリノベーションして作られた「WAEN dining & hairsalon(以下、WAEN)」がある。カフェを併設したヘアサロンで、サロンを利用するお客さんはもちろん、暖かみのあるオシャレな空間と、健康的かつ見栄えの良い料理に惹かれて、多くの人々が訪れる野毛山の人気スポットだ。

 

カフェと美容室の相乗効果で、行列のできる人気店に

WAENがオープンしたのは2017年。美容師として7年目を迎えていたオーナーの岩間貴寛さんが、横浜駅前の美容室から独立し、自身のお店を開いたのが始まりだ。横浜駅から近いエリアで物件を探すなか、担当していたお客さん伝いで紹介してもらったのが、長年空き家になっていた野毛山の古民家だったという。

岩間さん「妻が栄養士ということもあり、独立する際にはカフェを併設した美容室を出店したいという思いがありました。担当しているお客さんに借り手を探している物件があると紹介していただいたのがこの家で、カフェと美容室を一緒にできる広さがあるし、長年空き家になっていた古い民家を使って店舗をやることに面白さを感じ、この物件を選びました。」

「初めて来た時はお化け屋敷のようだった」という物件を、部屋の間取りが全て変わるほど大きくリノベーション。和室だった部屋は、吹き抜けの開放的なカフェスペースへと生まれ変わった。大規模な改修を行った中でも、敷居や欄間、床の間などが残され、スタイリッシュさと古民家の趣が融合した居心地の良い空間となっている。

日替わりデザートメニューであるキャロットケーキ。デザートメニューも充実しており、季節のフルーツを使用したフレンチトーストも人気メニューの一つだ。

カフェと美容室という異なる業態が組み合わさっているのも、WAENの特徴。固定のお客さんがいる美容室に対し、新規開拓となるカフェは最初こそ集客に苦戦したというが、オシャレな店内と見栄えも良く健康的なメニューがSNSで反響を呼び、いまや土日はモーニングの営業から満席に、ランチ時には店の前に行列ができる人気店となっている。

試行錯誤しながらメニューも変化。栄養士の奥様が作るフードメニューには野菜が多く使われ、身体に優しく彩りも豊かだ。

岩間さん「お店を開く際に、『美と健康』というコンセプトを考えていました。僕ら美容師は髪を切ることで美のお手伝いをし、カフェでは栄養のある料理を出すことで健康のお手伝いができたらと思っています。

最近はSNSを見た若い方が足を運んでくださったり、ご近所の年齢層が高めの方が常連さんになり、モーニングにふらっと来ていただくことも多いです。カフェは予約をせずともお店に入って食事をしたりコーヒーを飲むことができますが、美容室に予約せずに入店することはほとんどないですよね。ですがここでは、カフェに来店したお客さんに美容室を知ってもらい、その後の美容室の利用に繋がることも多いです。美容室を知ってもらうきっかけとしてカフェが機能するので、相性が良い組み合わせだなと感じています。」

 

反響を呼ぶ、美容師による古民家リノベーション

WAENは、野毛山にある横浜店を皮切りに、同じく神奈川県内に美容室、飲食店、グランピング施設を複合した「WAEN village葉山」(グランピング施設は現在施工中)、新潟県に飲食店と宿泊施設を併設した「WAEN dining柏崎」を開業。さらに3月21日には、三浦海岸の駅前に5店舗目となる焼き菓子屋を併設した美容室「HIBA Miura by WAEN」がオープンしたが、岩間さんやお店の美容師さんたちが、DIY・リノベーションを進めて開業に至ったというから驚きだ。

岩間さん「横浜店をリノベーションしてくれた大工さんは、内装工事に加えて、水道などの設備的なことも全て1人でできる方なので、コロナ禍でお店が暇になってしまった時期に約1年ほど、お仕事に付いて回らせてもらい、必要なことを色々と教えていただきました。新たに出店するにあたって、ネックになる内装費・施工費のハードルを下げるために、今は自分たちで空き家や空き店舗を改修してお店を作っています。」

岩間さんやWAENに所属する美容師がSNSにアップする「美容師が古民家をリノベーションする制作過程」の投稿は反響を呼び、新たな店舗をオープンする際の期待感を高めている。

WAEN dining & hairsalonの敷地内にはテラス席や立派な庭も。庭の畑では野菜を育てているそうだ。

さらにWAENでは、空き家や空き店舗を活用しながら新店舗を開拓してきた経験を活かし、今後は空き家の社会問題にアプローチすることを考えているという。

岩間さん「新潟県にある 『WAEN dining柏崎』は、限界集落に近いような山奥のまちで、飲食店と宿泊施設をやっています。昔は集客するには人通りのある場所にお店を作ることが最優先でしたが、今は自ら発信をして、それを良いと思ってもらえれば、お客さんに足を運んでもらえる時代だと思います。そういった田舎や郊外で空き家を活用して店舗を運営していくうちに、『うちの空き家を使ってほしい』といったお問い合わせをいただくことが多くなりました。

特に地方では、先祖代々大事にされてきた家や土地を手放すことを躊躇う方や、引き継いだ不動産の売り手が見つからず扱いに困っている方が多い。そういった物件の所有者さんが、ご自身で人を雇用して実際に店舗を営業していくのはハードルが高いですよね。その一方で、都会では、地方に暮らしながらカフェや飲食店を開きたいというニーズが年々増えているように感じます。

WAENは、飲食、美容室、宿泊、グランピングの分野で、内装の施工、施設の運営、広報まで全て自社で行っており、幅広く相談にお応えできると思うので、所有者さんからご相談をいただいた不動産をプロデュ―スする取り組みをこの春から始めようと考えています。『負動産』という言葉もありますが、自分たちができる範囲でサポートしつつ、そういった社会問題にも貢献できればと思っています。」

 

歴史あるものと近代的なものが混在するまち

WAENを開業するまでは、日ノ出町や野毛山エリアに馴染みがなかったという岩間さん。このまちでお店を始めて5年半。街への印象、そしておすすめの過ごし方を聞いた。

岩間さん「WAENを開業する前の2年間は横浜駅前の美容室で働いていましたが、『横浜と言えばみなとみらい』という印象で、日ノ出町方向に来ることはほとんどありませんでした。個性の強い人が多いディープな街に始めのうちは少し驚きましたが、面白い街だなと感じたことを覚えています。

5年半お店を続けてきて、僕はこの街が結構好きです。狭い範囲に昔からあるものと近代的なものが入り混じっている感じが、他の街ではあまり見られない、この街ならではの良さだと思います。海側と内陸側、野毛山の上と下でも雰囲気が違い、何層にも入り混じってまちが成り立っているのがとても面白いです。

おすすめの過ごし方は、大岡川の源流を目指して歩くことです。日ノ出町からスタートし、奥さんと二人で大岡川を辿って、源流の山まで歩いて行ったことがあって。弘明寺を抜け、港南台を抜け、山に着くころには日が落ちていましたが、歩くからこそ見つけられるものも多く、すごく楽しかったです。」

最後に、これからWAENを訪れる方に向けてメッセージをいただいた。

岩間さん「このお店は5年半、試行錯誤して変化しながら現在の形になりました。初めて来た方には、『こんな場所にこんな素敵なお店があるんだ』とびっくりしながら褒めていただけることが多く、ありがたいなと思っています。

WAENに来たことをきっかけに、使い道に困っていた田舎の家をこういう風に使うのもありだな、自分でも空き家を改修して何かを始めてみようかなと相談してくれるお客さんもいらっしゃって、そんな風に思ってもらえるのはすごく嬉しいです。古民家の活用を考えている方はぜひWAENを見に来て、雰囲気を感じていただけると良いのかなと思います。」

「和むようなご縁を築きたい」。

店名に込められた想いの通り、居心地の良い和の空間では、髪型を変えて美しくなったり、美味しいものを食べて心身共に健康になったり、古民家を活用して新しいことに挑戦したりと、訪れた人々の人生が豊かになるようなご縁が結ばれている。「まちのオシャレな人気スポット」の枠を超えたWAENの持つ魅力を感じに、ぜひお店へと足を運んでほしい。

 

取材・文/橋本彩香

スポット情報

WAEN dining & hairsalon

日ノ出町駅から野毛山を登って5分ほどのところにある古民家カフェ併設サロン。

 

営業時間
WAEN dining 9:00〜16:00 (月曜日のみ11:00~)
hairsalon 9:00~21:00 

公式HP 
https://localplace.jp/t200342797/

WAEN dinig公式Instagram 
https://www.instagram.com/waendining.official/?hl=ja

WAEN 公式Instagram 
https://www.instagram.com/waen.official/?hl=ja