オンライン合唱イベントにレシピ公開も。ニューノーマルな発信を続ける港の文化交流拠点

2009年6月に、アートスペースを兼ね備えるレストハウスとしてオープンした象の鼻テラス。以来、アートを中心とした文化プログラムから、月に1度開催されるマルシェ、常設のカフェなど、多岐にわたる取り組みで多くの横浜市民や観光客に親しまれてきた。新型コロナウイルスの影響で、2月末から約3か月間の臨時休館を余儀なくされたが、横浜の文化観光拠点として、コロナ禍でも精力的な活動を続けている。

アートも食もイベントも！オンラインで多様な発信をスタート

毎週日曜日に開催され、1日に約1,200人が訪れていた大人気のイベント「ぞうさんマルシェ」。象の鼻テラスが再開後も、集客イベント自粛のため、ぞうさんマルシェも再開の目途を立てられずにいる。「緊急事態宣言中、マルシェに出店していた方たちが活動の場が失われていて、象の鼻テラスからオンラインで何かやれることがないかという話になりました」そう語るのは、象の鼻テラス広報の橋本真紀子さん。オンライン販売を実施するのは難しくても、何か自分たちにできることはないかとスタッフで話し合いを重ね、5月より公式HPにて「ONLINE ZOU-SUN-MARCHE」を開始した。過去マルシェに出店した店舗の情報と店舗から届いたメッセージを毎週日曜日に発信し、サイトを訪れた人がお気に入りの店と出会う場づくりを行っている。他にも、過去に象の鼻テラスで行われたイベントの記録や、映像作品などをオンラインで公開する「ZOU-NO-HANA no ARCHIVE 」、毎月10 日の“おべんとうの日” にお弁当にまつわるイベントを行うBENTO PROJECTでは自宅での時間を有効活用してもらうためにカフェメニューのレシピをオンラインで発信するなど、休館中も横浜の文化観光拠点として多様な活動を行った。

5月30日の営業再開後も、新たな試みに挑戦し続けている。8月30日には「オンラインでつどおう！うたえ！ゾウハナ合唱部」と題し、これまで年に2回のペースで行われていたゾウハナ合唱部のイベントを初めてオンラインで開催した。公募で集まった合唱部員がそれぞれ自宅で歌っている動画を撮影。それらを重ね、「合唱」になった映像が披露された。なかにはジャカルタや京都・奈良から合唱に参加した人もいたそうだ。「距離を越えて輪が広がっていくことがすごく嬉しい」と橋本さんが語るように、ニューノーマル時代には、遠方の人ともより気軽に親密に交流する機会が増えていくだろう。

オフラインでも、ニューノーマル時代を楽しむ工夫が施されている。併設された象の鼻カフェでは、市民のアイデアで制作された象の足跡が、ソーシャルディスタンスを保ってレジに並ぶための目印として使われている。

SNSで話題のゾウノハナソフトクリーム

ゾウノハナソフトクリーム（Photo:Katsuhiro Ichikawa）

テイクアウト可能なカフェメニューが多いのも、この施設の強みだ。ゾウノハナソフトクリームは、フォトジェニックな見た目からSNSでも話題の定番メニュー。他にも象クッキーや象スコーンなど、象の鼻カフェならではの見てかわいい、食べて美味しいメニューが揃っている。

オリジナルビール（Photo:Katsuhiro Ichikawa）

横浜ビールと協働で作られたオリジナルビールには、カフェのオープン２周年記念の際につくられた限定ラベルを使用。苦味を抑えた黒ビールは、大人のピクニックにおススメの一品だ。

コロナ禍で繋がった仲間と共に

広報 橋本真紀子さん

「こんなご時世のなかで、県や国境を越えてオンラインで象の鼻テラスに訪れていただけるのはすごく嬉しくて、今後そういう繋がりがどんどんできたらなと思っています。でもそういう方たちも、また自由に行き来できる時期が来たら、ぜひ象の鼻テラスに遊びに来てほしい。市民の方々と一緒に何かをやる機会っていうのをいっぱい作っていく予定ですので、ぜひ、前のめりで参加して仲間になっていただけたらなと思います」（橋本真紀子さん）

オンラインでの活動によって、コロナ禍でなければ出会うことのなかった仲間と繋がることができた象の鼻テラス。今後も新しい仲間と共に、横浜の港から様々なニューノーマルを発信し続けていく。

取材・文/ 橋本 彩香