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ワイナリー2020.10.15
新山下
ワイン生産量日本一の神奈川で、クラフトワインの地産地消に挑む
横濱ワイナリー
神奈川県はワインの生産量が日本一であることをご存知だろうか。藤沢に国内最大手の製造工場があるのが理由だが、それらのワインは輸入果汁を原料としているため、日本で1番ワインを作っている県なのに、地産のワインがない。そこに目をつけたのが、町田佳子さん。自然環境保護を行う国際NGO「世界保護基金(WWF)」で広報を担当していた経験を活かし、地産地消に力をいれた小さな醸造所「横濱ワイナリー」を2017年11月にオープンした。元町の海のすぐそばにあるこの醸造所では、横浜初のクラフトワイン「ハマワイン」を生産しているほか、敷居が高く感じることもあるワインをより気軽に楽しんでもらえるよう、様々な取り組みが行われている。
ワインなのに和食!?

.blue
醸造所を開業した翌年の2018年7月には、併設したショップ&コミュニケーションスペース「.blue (ポイントブルー)」がオープン。ワインのテイスティングと共に、ハマワインに合うおつまみを楽しむことができる。「日本の食卓にも合うワインを作りたい」というコンセプトのもと製造されるハマワインは、辛口でありながら、繊細で柔らかな味わいが特徴。和食、特に出汁との相性がよい。.blue では、出汁や日本の発酵食品、横浜の地場野菜を用いたおつまみを、フランス語でおつまみを意味するamuseと和食をかけあわせた「和ミューズ」として提供している。
「これからの食のものづくりには、食体験を提供していくことがすごく大事だと考えています。つくる現場も食体験ではあるけれど、できあがったものにも、ストーリー性や他にはない独自性が必要なのかなって。ワインだからチーズ、ワインだからハム、ではない、ハマワインだからこれ。というものをちゃんと追求していきたいと思っています」
そう語るのは、横濱ワイナリーのショップコミュニケーターで、.blueのシェフを務める大越将司さん。和食と共にワインを味わう。一見型破りな横濱ワイナリーの食体験は、一度出会えばクセになること間違いなし。
ワインの楽しみ方を広げるワインカクテル

ハマカモメ スプリッツァ:各450円(税別)
コロナ禍で商品開発が進められ、今夏に販売開始されたばかりの「ハマカモメ スプリッツァ」。ハマワインと炭酸水を1:1で割ったカクテルで、お酒があまり強くないという人にも飲みやすい商品だ。国産の食用ブドウを使用し、炭酸水から自家製で作られている。
「ワイナリーがワインカクテルを商品として売るのはいかがなものかっていう人も中にはいるかもしれないですけど、うちはやっぱりハマっ子気質なので、セオリーに縛られず、どんどん新しいことにチャレンジしていきたい。
私たちは日本ワインという文化を、1人でも多くの方に知っていただきたい、ワインやお酒の楽しみ方の幅を広げていきたいという思いでワイナリーをやっています。ワンコインでお釣りがくる価格にして、今までなかなかお酒を手にとらなかった人たちの手元に届いたら嬉しいです」(大越さん)
ハマっ子に愛されるワイナリーを目指して

大越将司さん(左)、 代表の町田佳子さん(右) 提供:横濱ワイナリー
「みなさまのおかげで3年踏ん張ることができました。11月から4年目に入るので、もっと躍進し、次のステップにいくために、色々と準備を進めています。
横浜での食のものづくりにこれからも真摯に向き合っていきたいと思っているので、興味のある方や店頭で見かけた方はぜひお手にとっていただけたら嬉しいです。地産地消で、まずは横浜のみなさんに愛していただけるワイナリーになれるよう頑張ります」(大越さん)

まほろば Delaware2019:3000円(税別)
現在は他県で栽培したブドウを使用しているが、横浜で栽培したブドウを用いた、本当の意味での<横浜産ワインづくり>を目標にしている。2020年春には、その第1歩となる横浜のブドウ園を、150人の苗オーナーと共にスタートさせた。
3年後、5年後、10年後、横浜産のブドウを原料に、横浜の地で醸造されたワインを、浜風に吹かれながら飲む。そんな未来がやってくるのが楽しみだ。
取材・文 橋本彩香