アート2020.12.09

インディアナポリス

読書 × アート。街で発見するミニ図書館「Public Collection」

アートや本は、人生の羅針盤となって行き先を照らしてくれることがあります。米国インディアナポリスの街のあちこちに設置されたアートには、どれも本の共有ライブラリが埋め込まれています。市民たちは、モニュメントのようなミニ図書館を探したり、偶然に発見して、無料で本を借り返却します。

Phil O’Malley『The answer is in the question』(2015年)塗装木材  via: art-strategies.com

この「読書 × アート」の取り組みは、2015年にはじまった「Public Collection」というプロジェクトです。インディアナポリス公共図書館とアーティストのRachel M. Simonが協力し、市民の教養の向上と地元の芸術家への感謝を捧げるために、アーティストがデザインした無料のミニチュア図書館を街のあちこちに設置するというもの。

Tom Torluemke『Cool Books, Food For Thought』(2015年)木材 via: thepubliccollection.org

2015年にPublic Collectionは、9名の地元アーティストにブックステーションの制作を依頼し、作品を市内の様々な場所に設置しました。設置されたステーションの場所はWebサイトのマップで公開され、市民は探索に赴くことができます。サイトスペシフィックなブックシェア・ステーションは、インディアナポリス公共図書館から提供された、多様な利用者が興味を持つ様々な本を保管し、幅広い年齢層に対応しています。

コンセプチュアル・アーティストのBrian McCutcheonのブックステーション『Monument』は、市街の「Soldiers’ and Sailors’ Monument(インディアナ州兵士と船員の記念碑)」のあるモニュメントサークルに設置され、この記念碑の建設と同時期に書かれた1894年のマーク・トウェインの言葉からインスピレーションを得ています。

Brian McCutcheon『Monument』(2015年)スチール、アルミニウム、ポリカーボネート、グラスファイバー複合材、ペイント via: art-strategies.com

5本の柱にブックステーションが連なる『Monument』の上部には、図書館に関するトウェインの引用文が飾られています。「図書館は、最も永続的な記念碑であり、イベントや名前や愛情を保存するための最も信頼できるモニュメントです。そのため図書館だけが、戦争や革命でも尊重され、生き残っているのです」

マーク・トウェインの言葉は、Public Collectionによって可能になった本の知識やアイデアの自由な交流と強く関連している、と制作者のMcCutcheonは述べています。

Katie Hudnall『Nautilus』(2015年)合板、再生木材、木材、留め具とハードウェア、プレキシガラス、ペイント、インク、染料、ラッカー、ワックス via: thisiscolossal.com

Katie Hudnallの『Nautilus』は、再生木材で造られたロマンティックな螺旋状の棚と読書台です。ブックステーションの持続可能な素材は、設置場所であるエスケナジ病院の付近から採取された木材を使用しています。

「この作品の本体は、水の上のボートのイメージからインスピレーションを得ています。本や教育も、移動の一種であることを思い起こさせるようにデザインされています。本は人を別の場所や時間に運んでくれ、慰めや気晴らしを与え、わたしたちをより共感できる生き物にしてくれます」とHudnallは述べています。

Stuart Hyatt & S+Ca『Table of Contents』(2015年)再生木材、電子機器 via: art-strategies.com

Stuart Hyatt & S+Caの『Table of Contents』は、読書やオーディオブックを聴くための快適で居心地の良いパビリオンをホームレスの住民に提供します。このプロジェクトは、設置場所のホームレスシェルター「Horizon House」の住人と協力して設計されました。オフサイトで製造され、「Horizon House」のコミュニティの助けを借りて現場で組み立てられ、ホームレスのグループに一時的な雇用を提供しました。

Brose Partington『Harvesting Knowledge』(2015年)スチール、アルミニウム、ポリカーボネート、ステッピングモーター、コントローラー via: art-strategies.com

Brose Partingtonの『Harvesting Knowledge』は、クレーンコントローラーで操作するインダストリアルな電話ボックスのような書架。知識を能動的に収穫することの大切さを訴えています。

Kimberly McNeelan『Evolution of Reading』(2015年)ウエスタンレッドシダー、スチール、ポリカーボネート via: art-strategies.com

Public Collectionは、移民、インクルージョン、教育を祝うことに重点を置いています。プロジェクトは、これまで8万冊近くの本をコミュニティでシェアし、2019年1月には12基目のブックシェア・ステーションを発表しました。近年の新素材やテクノロジーを採用した作品は、街に新鮮な空気を吹き込んでいます。

Project One Studio『Conveyance』(2017年)アルミニウム、塗装済みアルミニウム複合パネル(ACP)、複合材 via: art-strategies.com

Owens + Crawley『Fissure』(2019年)アルミニウム、アクリル、LEDコンポーネント、ビニール via: art-strategies.com

Atsu Kpotufe『The Mind Sails』(2019年)フォーム、グラスファイバー、プレキシガラス via: art-strategies.com

Public Collectionの公共図書館ならではの「読書 × アート」の取り組みは、都市デザインのなかでもとてもユニークなアイデアです。本やアートとの偶然の出会いによる、知識と意識、文化やインスピレーションが街を循環し、コミュニティに力を注いでいます。

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