都市再生2020.10.02

ベルリン

気候変動にアクション。ベルリンでアーバンガーデニングの人気が急上昇

ドイツのベルリンで、若い世代を中心にアーバンガーデニングの人気が広がっています。都市菜園の区画を手に入れるのに3年待ちという人もいるほど。背景には、市民の気候変動とSDGsへの関心の高まりがあります。人々は、木箱のプランターで野菜や果物を育て、菜園の中でビールを楽しみながら環境保護に貢献しています。

コミュニティツールとしてのアーバンガーデニング

ベルリンの緑に囲まれたアーバンガーデニングの世界は、人々が自分の手で行動を起こしている市民主導のイニシアチブの例です。植物を育てることの純粋な喜びを超えて、社会的、環境的、経済的なメリットもあります。

ベルリンでは100年以上にわたり、緑地を利用して「シュレーベルガルテン(ガーデニング区画)」と呼ばれる区画で食料や花を栽培してきました。第二次大戦中、菜園家は都市の重要な労働者であり、住民に貴重な栄養を供給していました。それ以来、シュレーベルガルテンは現代のコミュニティガーデンへと発展してきました。最近では、気候変動の影響を受けて、アーバンガーデニング運動が新たな波を起こし、ベルリン中に人気の輪が広がっています。

ベルリンには、中心部の「Prinzessinnengarten」や北西部の「Himmelbeet」など、市民が運営する著名な都市菜園が複数あります。どちらの菜園も、ベルリンの他の多くの菜園と同様に、より強いコミュニティの絆を築き、訪問者に食の成長過程を教育することに重点を置いています。

「わたしたちは、たくさん食物を栽培することではなく、教育と参加に重点を置いています。ガーデニングは人々を結びつけるための都市のツールなんです」とPrinzessinnengartenのハンナ・ブルクハルトは言います。

Himmelbeetのアメリー・スティーグは、この街で急速に高まっている関心について説明しています。「ベルリンでは、自分の野菜を育てながら、緑に囲まれた環境の中でビールを飲んで楽しむことが流行っています。課題は、社会的な要因により、都市菜園が引き継がれないことです」

地質学の修士課程を修了したアメリーは、都市菜園の環境へのあまり注目されないもう一つの大きなメリットを説明します。「昆虫の多様性が都市に良い生態系をもたらすことは本当に重要です。また、温暖化に対して、植物は気温を下げるのに役立ちます。すべての菜園が都市の生態系のために大切なのです」

アーバンガーデンの土地の確保

ベルリンのような環境保護に力を入れている都市であっても、繁栄している都市が、ガーデニングのための土地を確保することは、継続的なチャレンジとなっています。

ベルリンの廃墟となったテンペルホーフ空港の敷地内にあるコミュニティガーデン「Tempelhofer Feld」は、一つの解決策です。Tempelhofer Feldは、2008年に閉鎖された空港跡地を利用した大規模なコミュニティガーデンです。土を掘ることは許されていませんが、代わりにガーデンでは、リサイクルされた材料を使って箱やベンチが造られ、訪問者が自由にオープンスペースを楽しむことができるようになっています。

Prinzessinnengartenでは、地元の聖職者の協力のもと、ノイケルンの墓地にガーデンを造っています。「過去30年間で葬儀の数が減り、埋葬の文化も消えつつあるので、より多くのオープンスペースがあります。何よりも良いのは、このようなガーデンなら、儲かる建築プロジェクトに取って代わられることがないということです」とハンナは説明します。このアイデアは、他の都市のアーバンガーデンにも適用可能な解決策の可能性があります。

都市のサステナビリティを考える

コミュニティの構築とともに、環境に配慮した持続可能な方法で食料を栽培するという幅広いアイデアが、都市の大規模プロジェクトにも浸透してきています。

その一例が、ベルリンのCityLabが立ち上げたイニシアチブで、ベルリンの生活の質を向上させるためにデジタルを利用した実験的なプログラムを実施しています。最新のプロジェクトの一つである「Giezden Kiez」は、市の樹木登録簿からデータを収集し、62万5千本の木に番号を付けて、天気予報データと組み合わせて、予想される降雨量を推定します。

開発者のジュリア・ジンマーマンは、このアイデアの起源について次のように説明しています。
「ますます乾燥する夏の気候学的な影響を鑑みて、ベルリン市民が木に水をやることができる革新的なアプリを作ろうと考えました。ガーデンホースや水やり缶があれば、市民は街の樹木に水をやることができます。アプリでは、樹木の種類と必要な水の量についての情報を見つけることもできます。このアプリは、一部の地域ではすでに一般的になっている、樹木に水をやる習慣を普及させ、樹木の持続可能性に貢献するものになるはずです」

もう一つの例は、かつての麦芽工場を再利用したECF Farmsystemsの農場です。ECF Farmsystemsでは、循環システムでバジルと魚を生産し、ベルリンの消費者に提供しています。魚の排泄物は温室で育てているバジルの肥料に使われ、植物から発生する酸素は、魚のために水に酸素を供給しています。カーボンニュートラルに焦点を当てたこの農場は、近代的な都市型アクアポニックスと野菜栽培を融合させ、代替農業の経済的な実行可能性を示しています。

「地元で生産することで、環境を保護し、短い供給ルートで生産物の鮮度を保つことができます。水産養殖とと水耕栽培を組み合わせることで、水、肥料、CO2を節約することができます」と共同設立者であるクリスチャン・エッチャーナハトは述べます。

ベルリンのアーバンガーデニングには、コミュニティツール、都市の生態系、サステナビリティ、カーボンニュートラルなど、より良い都市環境を実現させるための様々な要素が含まれていることがわかりました。SDGsを目標に置いた都市づくりのアプローチに、インスピレーションを与えてくれる事例と言えるでしょう。