都市再生2020.12.07

コペンハーゲン

思い出博覧会。移民の街を融和させたコペンハーゲンの公園「スーパーキーレン」

自分にとっての日常が、よその国の人にとっては非日常に見える。文化の多様性のおもしろさであり、排除の感情がわく理由でもあります。コペンハーゲンの移民の街にできたカラフルな博覧会のような公園。祖国の日常の思い出がつまった様々な遊具やファニチャーが散りばめられ、地域住民の共生をうながしています。

コペンハーゲンにあるノアブロ地区は、デンマークで最も多様な国の移民たちが暮らしている地域。文化や言語の違いのために住民同士の交流が少なく、争いや犯罪が多発する危険なエリアと市民から見なされていました。そこでコペンハーゲン市と慈善団体Realdaniaは、ノアブロ地区を貫く鉄道車庫の跡地を公園として再開発する建築コンペを実施することしました。

Superkilen(スーパーキーレン)と呼ばれる公園建築プロジェクトで選ばれたのは、ビャルケ・インゲルス率いるデンマークの建築事務所 BIG、ランドスケープアーキテクト Topotek1、アーティスト集団 Superflexのチームによるマスタープランです。移民の出身国の遊具やファニチャーを多数配置する博覧会のようなプランとなっていました。BIGは、スーパーキーレンのプロジェクトを実施するにあたり、住民参加のプロセスを組み込みました。移民たちの記憶に残る祖国の設備やシンボルを聞き出すために、地道にヒアリングして回りました。

2012年6月に公開されたスーパーキーレンの全長750メートル、3万平方メートルの敷地には、約60カ国から取り寄せた100を超えるストリートファニチャーや遊具が並んでいます。公園は、レッド、ブラック、グリーンの3つの色分けされたゾーンに分かれており、それぞれのゾーンで異なるオブジェを見つけることができます。オブジェには、それが何なのか、どこから来たものなのかを、デンマーク語と現地の言語で説明した小さなステンレス製のプレートが付属しています。

スーパーキーレンは多様性を称え、非日常の光景から人々の交流を生み出すことに注力しています。アルメニアのピクニックベンチ、ロサンゼルス・マッスルビーチの運動器具、イスラエルの下水管、中国のヤシの木など、公園を訪れる住民が選んだ祖国の記憶の万国博覧会です。

レッドスクエアは、スポーツ施設「ノアブロホール」の延長線上に位置し、広場を中心としたレクリエーションの場として、地域の人々がスポーツやゲームを通じて交流することができます。レッドスクエアでは週末に、コペンハーゲンや郊外からの観光客が集まるオープンマーケットが開かれています。

広場の大部分は赤やマゼンタの全天候型ラバーで覆われており、球技大会、マーケット、パレード、冬季のスケートリンクなどが行えるようになっています。東側の広場では、カフェで屋外サービスを受けることができます。北側には、バスケットボールコート、駐車場、屋外フィットネスエリアがあります。

タイのムエタイリング、チェルノブイリの滑り台、イラクのブランコ、インドのクライミング、ジャマイカのサウンドシステム、各国のベンチ、イギリスの古典的なゴミ箱、自転車スタンド、駐車場などがあります。夜には、カタールやロシアのネオンサインがシュールに輝いています。

ブラックスクエアは、マスタープランの真ん中に位置する都市のリビングルームです。モロッコの噴水、トルコのベンチ、日本の桜の木の下で、地元の人々が集まり、テーブルやグリル設備で交流を楽しめます。地上には多数の白いラインが風を表すかのように描かれ、様々なストリートファニチャーを避けるようにカーブを描いています。

ブラックスクエアの端には、現地で造られた日本のタコの滑り台が鎮座しています。スーパーキーレンの人気の遊具とのこと。

グリーンパークは、柔らかい丘陵地と緑豊かな景観で、子供や若者、家族にアピールしています。子ども連れのファミリーが、ピクニックや日光浴、芝生での休憩、ホッケーやバドミントン、ワークアウトなどで集まることができる遊び場となっています。

スーパーキーレンの記憶の公園は、言葉の不要なスポーツやアクティビティを通して、住民同士の体感的な交流を促進させています。日常と非日常が揺らぐ遊び場が、アイデンティティを尊重した多文化共生に結びついた公共スペースデザインの成功例だと思います。

Via:
dezeen.com
archdaily.com