横浜のアート好き、音楽好きに愛される名店の新たな挑戦

横浜駅にほど近い鶴屋町にある、アートと音楽を愛する人々が集まるダイニングバー「GRASSROOTS yokohama」。地下にあるお店へと続く階段には、迫力あるペインティングアートが。店内には、個展を開催したアーティストたちの置き土産が飾られている。店内で開催されるライブには、2020年『香水』で大ブレイクを果たした瑛人がステージに立ったこともあるという。横浜の地でたくさんの出会いを生み出してきた名店は、コロナ禍でも、ライブペインティングのオンライン配信など新たな試みに挑戦し続けている。

お店を愛する人々に支えられた自粛期間

コロナ禍以前は夜のみの営業で、20代から70代まで、幅広い年齢層の客で店内が賑わっていた。共通の趣味や仕事を持つ人々がカウンターに並んでお酒を飲み交わすことで、新たな仕事に繋がることもあるそうだ。しかしそんな名店も、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響を受け、4月8日から、一時的に営業を休止した。その後は国と横浜市のガイドラインに則り営業を再開するも、時間を大幅に前倒しし、ランチの提供やテイクアウトを行った。

店長の佐間田伝伸さんが「皆さんに本当お世話になった」と語るように、多くの常連客がランチやテイクアウトを利用した。さらには、遠方から足を運ぶことが難しい状況のなか、グラスルーツに関わったアーティストや常連客から多くの励ましや応援のメッセージが届いたという。そのなかで特に嬉しかった言葉を尋ねると、「もう全部ですよ。どれってのはないです。改めて頑張らなきゃなっていう気持ちになりました」と答えてくれた佐間田さん。コロナ禍で改めて感じたお客さんへの感謝を胸に、新たな挑戦へと動き始めている。

オンライン配信にアルバム、コロナ禍でもできることを

GRASS ROOTSといえばやはりアートと音楽。画廊に入るのは少しハードルが高いというお客さんの声を聞いた佐間田さんは、「飲みながらふらっと作品を観れる場所を作りたい」という思いで、店内にアーティストの作品展示を行っている。アーティストが知り合いのアーティストを連れて来店し、そのアーティストがまた知り合いのアーティストを連れてくるというように輪が広がり、1ヶ月周期で行われる個展は3年先まで予約が埋まっているそうだ。緊急事態宣言発令期間は、作品が人の目に触れる機会が減ることのないよう、展示した作品をWEBやインスタグラムで発信した。現在はライブペインティングのオンライン配信の実現に向けて準備を進めている。さらに今秋には、10組以上のミュージシャンがコロナ禍に録りためた音源を集めたGRASSROOTSのコンピレーションアルバムが発売予定。コロナ禍でもアートや音楽との出会いの場を作り続けている。

 GRASSROOTSこだわりのバーメニュー

7月から夜（17時から24時まで）の営業を再開。アートや音楽だけでなく、バーとして飲食メニューが充実しているのも大きな魅力だ。

マルゲリータピザ

「できるかぎり自家製でやっていきたい」という佐間田さんこだわりから、メニューのほとんどが自家製で作られている。厨房で生地から手作りしている絶品のマルゲリータピザは、GRASSROOTSを代表するメニューの１つ。

GRASSROOTSオリジナルビール

横浜ビールとのコラボで作られているオリジナルビールも、人気商品の１つ。ライブペインティングで描かれた作品をラベルに使用したGRASSROOTS限定の商品で、イベントの開催に合わせて不定期で販売されている。

 みんなで楽しく乾杯できる日常を

佐間田伝伸さん（左）佐藤聞太さん（右）

「みんなで楽しく乾杯できる世の中がもう一度戻ってくると一番良いかなって。自分の店というよりかは、世界がそういう風になってくれるが一番嬉しい。 GRASSROOTSという店名には、草の根の要素があるので、繋がりやみんなのおかげで流れついたものを、上手くみんなに広げていけたらなと思っています」（佐間田さん）

コロナウイルス感染症によって、営業時間やイベントの方法など、様々なことが変化を余儀なくされた。しかしそれでも、GRASSROOTSの幹は変わらない。新たな試みを模索しながら、横浜のアート好き、音楽好きの人々が集うハブとして、人とアート、音楽が出会う場所を守り続けている。

取材・文/ 橋本 彩香