カルチャースポット

カフェ2021.09.21

日ノ出町

日ノ出町の人たちにとってなくてはならない場所に

CAFE GEEK

日ノ出町駅から歩いてすぐ、大岡川沿いにある「CAFE GEEK」。店内に入ると、コーヒーの良い薫りが鼻をくすぐる。

「常連さんがいてくれるからこそ、この店がある」と語る秋本悠さん。オープンして4年目を迎え、地元の人たちにとってなくてはならない存在になっている「CAFE GEEK」が歩んできた道、そして日ノ出町で目指すものについて聞いた。

コーヒーのおいしさに出会い、夫婦でカフェをオープン

10代のころから「何かしらのお店をやりたい」という思いを抱いていたという秋本さん。それがカフェに繋がったのは長期滞在したオーストラリアで「コーヒーにハマッた」のがきっかけだった。オーストラリアでは毎日のようにコーヒーを飲み、バリスタの資格も取った。

その後、オーストラリアで知り合った韓国出身の男性と結婚。その縁から一時期、韓国に住んでいたが、そこでカフェ文化に触れることになる。

「夫もお店をやってみたいと言っていたので、カフェだったら予算的にも、規模的にも始めやすいかな、と思ったんです。
店を出す場所として日ノ出町を選んだのは夫が近くにある飛鳥学院に通っていたのがきっかけですね。ただ、横浜出身ということもあって、潜在的に横浜がいいな、というのはあったみたいです。都内でもいろいろ探してみたんですけど、やっぱり戻ってきました」(秋本さん)

決め手は川沿いだったということ、天井が高くて、ガラス張りだったということ。「CAFE GEEK」が入るまでは2年空き店舗で、それ以前はクリーニング店だった。しかし内装は、壁を貼ってカウンターを入れたぐらいであまり触っていないという。シンプルだが、店内に飾られた雑貨がどれもさりげないセンスを感じさせる。

「オーストラリアで日本食レストランで働いていたときに、オーナーさんが『いつかお店をやりたいと思っているなら、自分が気になったものはとりあえず写真に撮っておけ』と言われたんですけど、そのあとは本を読んでいても、何をしていても、とりあえず写真に撮りためていました。多分、その集大成になっているんだと思います」

夫婦、と常連の三人四脚

エスプレッソマシーンで入れたコーヒー。そして種類豊富なサンドウィッチ。パンは店で焼いており、「母のレシピで焼いている」と秋本さん。ハム&チーズやチキン&アボカドなど、定番のものから、プルコギサンドというものも。


「メニューは年々増えているかな。最初は3つしかなかったんですよ。店をやりながら、アイディアが浮かんだら作ってみておいしかったらメニューに入れる。プルコギは雑誌で一度見たことがあったので、サンドしてみたらおいしかったので。メニュー研究というほどのことはしていないですけど、基本は夫の味覚に任せているところがあります。すごく料理がうまいんですよね」

夫婦、二人三脚。しかし、おふたりには強力な味方がいた。常連の存在だ。

「お客さんからこれやったらいいんじゃないか、こうしたらいいんじゃない、っていろいろアドバイスをもらいましたね。テラス席のパラソルも、お客さんに置いてみたら、って言われたのが最初です。私たちだけじゃここまではできないと思うし、これからも常連さんがいないとやっていけない。大事にしていきたい存在ですね」

コロナ禍になってから、その大切さをより感じるようになっているという。昨年、1週間だけ店を閉めている時期があったが、それ以外は通常通り営業を行っている。


「常連さんに1回言われたことがあるんですよね。ここ閉めたら路頭に迷うじゃないって」

日ノ出町の人たちにとっても、お店がかけがえのない存在になっていることがわかる一言だ。

街から作りたい店、心意気を受け取っている

横浜に住んでいても最初は「日ノ出町」という名前しか知らなかったという秋本さん。4年が経った今は、日ノ出町は人懐っこい街だと感じているそうだ。人に助けられているというのは日々実感している。

「よくおすそ分けをいただくんですけど、以前アジを丸ごと2本いただいたことがありましたね。それがなんだか日ノ出町っぽいな、って。おもしろい人、型にはまっていない人がすごく多い。日ノ出町に来なかったら会えなかったような人にも出会えている気がします」

そして、日ノ出町で尊敬できる、大好きな人にも出会えた、と秋本さん。

「栄屋酒場というお店のご主人なんですけど、疲れたとか、辛いとか一切言わないんですよ。すごく楽しそうにやってらっしゃるし、開店時間もやらなきゃいけないんじゃなくて、お客さんと約束したことだから開ける、というような人だったんです。昨年、亡くなられたときは本当にすごく衝撃的でしたね。お客さんに対する姿勢はその人の心意気を受け継ぎたい、ですね」

CAFE GEEKの壁にはひっそりと栄屋酒場が雑誌に掲載されたときのページが貼られている。

これからのお店の展望について「大それたことは考えていなくて。でも、日常にあるのが当たり前、みたいなお店にはなりたいな、と思いますね」と秋本さん。

それはきっと、尊敬する人の心意気を受け継いだからこそ出てきたものだろう。

人から人へ、心が受け継がれていく。日ノ出町という街の根底にあるものが感じられるのではないだろうか。

スポット情報

CAFE GEEK

2018年オープン。日ノ出町駅から歩いてすぐ、大岡川沿いに店を構える。
スペシャリティコーヒーとサンドイッチやお菓子などの食事が楽しめるカフェ。
住所:〒231-0066 神奈川県横浜市中区日ノ出町1丁目